樋屋製薬が製造・販売を手がける樋屋奇応丸は、江戸時代初期の元和年間(1600年代前半)に大阪で誕生して以来、約4世紀にわたり日本の家庭で受け継がれてきた小児五疳薬(しょうにごかんやく)の代表格です。関西圏を中心に「赤ちゃん、夜泣きで困ったな〜」というテレビCMで圧倒的な知名度を誇りますが、その本質は厳選された天然生薬の組み合わせによる中枢神経と自律神経の調整にあります。
乳幼児期は脳の神経伝達系(興奮を抑えるGABAや情緒を安定させるセロトニン)が未発達な状態にあります。日中に受けた音や光、周囲の環境変化などの刺激が脳内で過剰に処理され、夜間に「かんの虫(理由のわからない激しい不機嫌、癇癪、噛みつき、夜泣き)」となって表出します。
樋屋奇応丸はこうした興奮状態に対し、以下の主要な生薬を微小な丸薬に凝縮することでアプローチします。
- 沈香(ジンコウ):東南アジア原産の貴重な香木。高ぶった「気」を降ろし、精神を鎮めるとともに胃腸の働きを活発にする。
- ジャコウ(麝香)/牛黄(ゴオウ):中枢神経に働きかけて興奮を鎮静化させ、自律神経のバランスを回復させる。
- ユウタン(熊胆)または動物胆:消化機能を助け、熱を冷まして内臓の緊張をほぐす。
- 人参(ニンジン):消化吸収力を高め、体力を補強して虚弱体質を改善する。
- 丁字(チョウジ):胃腸を温め、消化不良や腹部膨満感を和らげる。
東洋医学において、乳幼児の神経の高ぶりは「胃腸の未熟さや消化不良」と表裏一体であると考えられています。樋屋奇応丸は単に脳を鎮静させるだけでなく、胃腸を健やかに整えることで心身双方の緊張をほぐす二重のアプローチを取っている点が、長年支持される医学的根拠となっています。