まずは言葉の骨格を正確に捉えるため、文法構造と語源から整理します。古文の基礎でありながら、多くの人が曖昧に記憶している部分です。
「いとをかし」を品詞分解すると、以下の2つの単語に分かれます。
- いと(副詞):程度がはなはだしいさまを表す。「たいそう」「非常に」「とても」。
- をかし(形容詞・シク活用・終止形):心が惹きつけられる状態を表す。「趣がある」「興味深い」「風情がある」「美しい」「滑稽だ」。
つまり直訳すれば「たいそう趣がある」「非常に心惹かれる」という意味になります。古文における「いと」は、現代の「超」や「とても」に相当する強調表現ですが、品格を保った知的な強調として機能していました。
一方、検索や日常の会話でしばしば目にする漢字表記についての誤解も少なくありません。「いとお菓子」と表記するのは現代の言葉遊び・ネットミームであり、本来の古語としての漢字表記は定まっていません。語源としては、心が引き寄せられる動作を示す「招(を)く」に由来するという説が有力です。後世の当て字として「愛し」「可笑し」「招し」などが充てられるケースはありますが、平安朝の仮名文学においては「をかし」と平仮名で記すのが正式な表現形式です。