ネット上の情報空間には、両疾患に対する危険な先入観や誤認が根強く漂っています。現場の小児科医が警鐘を鳴らす代表的な2つの盲点を検証します。
1つ目は、「突発性発疹と手足口病はどちらか一方しかかからない」「同時にかかることはない」という思い込みです。結論から申し上げますと、突発性発疹と手足口病の同時感染の可能性は臨床上十分にあり得ます。両者は全く別系統のウイルスによって引き起こされるため、例えば保育園で手足口病をもらってきた潜伏期間中に、家庭や外出先でヒトヘルペスウイルス6型が初感染し、高熱が下がるのと同時に手足口病の水疱と突発性の全身紅斑が重なって発現するケースが報告されています。小児科医でも初期診断に難渋するパターンであり、「手足口病と診断されたのに、解熱後にお腹まで真っ赤になった」という場合は、ウイルスの重複感染や続発感染を疑う柔軟な視点が求められます。
2つ目は、「子どもの夏風邪だから大人は安全」という油断です。突発性発疹の原因であるHHV-6や7は成人のほぼ100%が抗体を保持しているため大人が発症することは極めて稀ですが、手足口病は全く話が別です。手足口病が大白にうつる症状は、小児のそれとは比較にならない激痛と苦痛をもたらします。子どもを看病していた親が感染した場合、39度前後の悪寒を伴う高熱が出た後、足の裏に無数の硬い水疱が発生し、「足裏に無数の画鋲が刺さっているようで歩行できない」「包丁を握るだけで手のひらに激痛が走る」といった重篤な症状に見舞われます。さらに、発症から数週間から1カ月後に手足の爪が根元から剥がれ落ちる爪甲脱落症(そうこうだつらくしょう)を起こす事例も確認されています。オムツ交換後の石鹸による手洗いの徹底や、オムツ処理時の使い捨て手袋の使用は、大人の日常生活を守るための必須防衛策です。