SNSやインターネット上の言説には、突発性難聴に関するいくつかの根強い誤解が見受けられます。報道を正しく読み解き、自身の健康を守るためにも、流布する言説の真偽を整理しておく必要があります。
誤解1:「芸能人が活動復帰した=聴力が完全に元通りになった」
メディアで「活動再開」「現場復帰」と報じられると、一般には病気がすっかり治ったと受け取られがちです。しかし日本聴覚医学会の報告等によると、突発性難聴の発症者のうち完全治癒するのは全体の約3分の1に過ぎません。残る3分の1は部分的回復にとどまり、最後の3分の1は聴力の改善が認められないのが臨床の現実です。復帰した芸能人の多くは、耳鳴りや聴覚過敏、片耳の低音障害といった後遺症を抱えながら、機材や生活習慣を調整して舞台に立っています。
誤解2:「大音量のイヤホンで音楽を聴きすぎたことが原因である」
長期間の大音量リスニングによって生じるのは主に「音響外傷」や「騒音性難聴」であり、ある日突如として片耳が聞こえなくなる突発性難聴とは医学的な発症機序が異なります。イヤホン難聴は両耳に徐々に進行するケースが大半です。突発性難聴は、過密スケジュール、精神的重圧、ウイルス感染、気圧変動などが引き金となる内耳血管の痙攣・微小循環不全が主要因とされています。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
耳に異変を感じた際、どのような行動を取るべきか。その行動基準を明確に区分します。
- 即座に耳鼻咽喉科の精密検査を受けるべき人:「今朝起きたら片耳の聞こえが急に落ちた」「耳の詰まり感とともに激しい耳鳴りが始まった」という自覚がある人。仕事や家庭の事情をすべて後回しにし、何よりも受診を最優先すべきです。
- 経過観察や自己流の民間療法を絶対に避けるべき人:「数日寝れば治るだろう」と市販薬の服用や耳抜きで対処しようとしている人。突発性難聴においてタイムロスは細胞死に直結するため、安易な自己判断は取り返しのつかない結果を招きます。