古谷の作陶工程において、最も苛烈を極めるのが窯焚き(かまだき)の作業だ。数日間にわたり、不眠不休で赤松の薪を穴窯にくべ続ける。窯内部の温度は1300度を超え、一瞬の油断がすべての作品を無に帰すリスクを伴う。
窯焚きの最中、古谷は窯の鳴りや炎の色、煙の匂いから内部の状態を極限まで読み取る。薪から生じた灰が、作品の肩に降り積もる。それが高温でガラス質に変化し、流れるようなビードロ釉となる。火の走るルートや作品同士の配置によって、赤く染まる「緋色(ひいろ)」や、灰に埋もれて黒く変化する「焦げ」が生まれる。
- ビードロ釉:薪の灰が熔融して生じる、ガラス質の澄んだ緑色の層。
- 火色(緋色):土中の鉄分が炎と反応して発現する、温かみのある赤褐色。
- 焦げ:灰の中に埋もれた部分が還元焼き締めされ、黒灰色に変化する現象。
- 石ハゼ:土に含まれる長石の粒が熱で弾け、表面に露出する野性味あふれる表情。
これらすべての要素が、一つの器の上で奇跡的なバランスで融合する。計算され尽くした窯の構造と、絶対的な運。古谷はその境目で勝負を挑んでいる。