『時をかける少女』は、現在でも中高生の読書感想文の題材として極めて高い人気を維持しています。その理由は、本作が単なるサイエンス・フィクションの枠組みにとどまらず、「思春期の喪失と不可逆な時間の尊さ」を完璧に描き出しているからです。
誰しもが経験する「あの時に戻りたい」という後悔や願望。しかし、時間を操る力を手に入れた和子が直面したのは、万能感ではなく、日常が崩壊していく恐怖と孤独でした。そして、愛おしい記憶を消し去られることの切なさです。
大人になってから角川文庫版を再読すると、中学生のころには気づかなかった「二度と戻らない青春の儚さ」が胸に刺さります。100ページ強というコンパクトな分量の中に、SFのアイディア、サスペンス、淡い初恋、そして人生の不可逆性が見事に凝縮されており、短時間で極上の文学体験を味わうことができます。