都市の喧騒の中で季節の移ろいを見失いがちな現代において、春のわずかな期間しか出回らない山菜は、特別な存在感を放つ。とりわけウドは、光を遮断して地下の室(むろ)で白く育てる「東京ウド」と、野山の日光を浴びて緑鮮やかに育つ「山ウド」とで全く異なる表情を見せる奥深い食材だ。食品・外食産業でも、季節の幕開けを告げるシグネチャーディッシュとしてウドの小鉢が競うようにオンメニューされている。
一口かじれば、鼻腔を抜ける爽涼な芳香。奥からじわりと広がる快いほろ苦さ。その鮮烈な体験こそが、慌ただしい日々を送る現代人の感性を心地よく揺さぶる。スーパーの棚に年中同じ野菜が並ぶ時代だからこそ、ほんの一瞬の旬を愛でる和の精神が、改めて私たちの心を捉えて離さない。