カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールに輝いた『万引き家族』で、世界中を戦慄させた安藤サクラの取り調べシーンは記憶に新しい。涙を手でぬぐうことすら忘れたあの名演に、審査員長のケイト・ブランシェットをはじめとする世界の映画人が惜しみない賛辞を送った。さらに是枝裕和監督の『怪物』でも、母親の抱くやり場のない焦燥と愛情を生々しく演じ切り、日本アカデミー賞協会の選考でもその名を轟かせた。
江口のりこもまた、是枝チルドレンや同世代の映画監督たちから熱烈なオファーを受け続けている。言葉に頼らず背中で語る絶妙なニュアンスは、安藤サクラの野生と鏡像の関係にある。映画ファンが「もし二人が是枝作品で濃密に対峙したら」と妄想を膨らませてきたのも、ごく自然な成り行きだった。