この青いドレスを唯一無二の存在へと押し上げているのが、表面全体にちりばめられたスワロフスキーのクリスタルだ。その数、実になんと1万個以上。職人たちの手作業によって一つひとつ丁寧に縫い付けられたクリスタルは、劇中の王宮のシャンデリアや照明を反射し、まるでドレス自体が内部から発光しているかのような効果を生み出した。
しかし、この輝きを支える内側の構造こそが最大の驚愕ポイントだ。ドレスの内部には、軽量な鉄鋼素材で作られたクリノリン(スカートを広げるための枠組)が組み込まれている。膨大な重みでシルクが潰れるのを防ぎつつ、リリー・ジェームズが優雅に回転した際にはドレスが花開くように広がる特別な設計が施されていた。物理的な強度と軽やかな浮遊感という、相反する要素を高次元で両立させたこの緻密構造は、当時の映画美術界に大きな衝撃を与えた。