日本のポピュラー音楽史において、久保田利伸という存在は極めて特異な位置を占めています。かつて「日本語はR&Bやファンクのリズムに乗らない」と言われていた定説を、16ビートのシンコペーションと見事なフロウで見事に覆したのが彼でした。
現代の音楽市場では、ボーカロイドカルチャーや配信主体のタイパ(タイムパフォーマンス)重視のショート動画からヒットが生まれる傾向が強まっています。そうした記号的・デジタル的な音像が溢れる時代だからこそ、久保田利伸がステージ上で見せる「肉体を通した生々しいグルーヴ」と「その場の空気と呼応する歌声」が、聴き手の身体感覚を強烈に覚醒させます。
観客が手を叩き、腰を揺らし、アーティストと一体となって空間を創り上げる体験は、社会学で言う「集合的沸騰(Collective Effervescence)」そのものです。世代や属性の違いを越えて、会場にいるすべての人間がひとつのリズムで結びつく高揚感こそ、彼が40年近くにわたりライブシーンの頂点に君臨し続ける本質的な理由と言えます。