かつて「関東人には豚骨の独特な臭気は受け入れられない」というのが、外食産業における絶対的な定説だった。そのタブーを鮮烈に打ち破ったのが、1987年に世田谷区羽根木で産声をあげた「なんでんかんでん」である。本場福岡の濃厚な白濁スープと極細ストレート麺をそのまま持ち込み、東京人の舌を強烈に覚醒させた。
巻き起こったのは、いわゆる「環七ラーメン戦争」と呼ばれる空前絶後のブームだ。深夜2時にもかかわらず数百人が路上に長蛇の列を作り、スープ切れまで客足が途絶えない。路肩に並ぶ高級外車、タクシーの車列、近隣住民との摩擦。社会現象化する喧騒の中心で、名物店主としてスポットライトを浴びた川原ひろしは、博多豚骨ラーメンを全国区のカルチャーへと押し上げた最大の功労者となった。