2000年代初頭、山形県は深刻な空き家問題に直面していた。特に農村部では過疎化により、価値ある伝統建築が放置される事態が続いていた。転機は2005年頃。鶴岡市で最初の古民家カフェが誕生したことだった。
築120年の庄内地方の商家を改装したこの店は、地元住民の反応を呼んだ。懐かしさと新鮮さが同居する空間。若い世代が古い建物に価値を見出し始めた瞬間だった。
山形県は2008年に「やまがた里山カフェ推進プロジェクト」を立ち上げる。空き家活用と観光資源化を目指す施策だった。補助金制度が整備され、改装費用の一部を県が負担する仕組みができた。結果、2010年代に古民家カフェの開業ラッシュが起きる。
建築史の専門家は指摘する。山形の古民家には独特の構造美がある。豪雪地帯特有の太い柱と梁。高い天井。広い土間。これらは現代のカフェ空間として理想的な要素だった。大規模な構造変更なしに、開放的で快適な空間が実現できた。