華やかなテレビの脚光を浴びる以前、彼女のキャリアは銀幕と舞台の下積みから始まった。映画会社「新東宝」の新人女優としてデビューを果たしたものの、当初からスター街道を歩んだわけではない。端役をこなしながら牙を研ぎ、表現者としての土台を削り出していった時期だ。
転機となったのは「劇団新派」への参加である。伝統的な和の情緒と人情味あふれる舞台で、彼女は「市井に生きる女性の哀歓」を体当たりで演じ切った。大将の女将さんや路地裏のお内儀さんなど、泥くさくも温かいキャラクターの造形力は、この時期に培われたものだ。舞台で培った圧倒的なセリフの間と、言葉がなくとも感情を伝える表情の妙。それが後にテレビ界へ進出した際の大きな武器となる。