飯田市龍江地区の歴史を語るうえで欠かせないのが、江戸時代中期から受け継がれてきた伝統芸能「今田人形座」の存在です。享保年間(1700年代前半)に淡路や淡路島系の人形遣いから伝承されたと伝わる人形浄瑠璃で、農村歌舞伎の情熱を今に伝える貴重な民俗文化として国の選択無形民俗文化財に指定されています。
拠点となるのは、地区の鎮守である大宮八幡社の境内にある「今田人形館(大宮座)」。太夫の語りと三味線の響きに合わせ、3人遣いの人形が喜怒哀楽を細やかに表現する舞台は、息をのむほどの迫力と幽玄さを放ちます。秋の例大祭や定期公演では地域住民のみならず、全国から伝統芸能ファンが足を運び、境内は熱気に包まれます。
龍江の文化的な強みは、この伝統を単なる保存対象とせず、世代を超えた地域コミュニティの結びつきとして日常に溶け込ませている点にあります。地元の若手後継者の育成にも力が注がれており、地域のアイデンティティとして誇り高く継承されています。