「とり野菜みそ」という商品名を初めて目にした人の多くが、「鶏肉入りのみそ」あるいは「鶏ガラスープ仕立てのみそ」を想像します。しかし、パッケージ裏面の原材料表示を確認すると、鶏肉やチキンエキスなどの肉類は一切使われていません。このネーミングギャップこそが、全国で最も多く寄せられる疑問の一つです。
製造元である株式会社まつやの公式記録によると、「とり」とは鶏(チキン)のことではなく、「野菜や栄養をたっぷり“摂る”」という言葉に由来しています。肉の名称ではなく、身体に必要な栄養をしっかり摂取してほしいという願いが込められた動詞の「摂る」が名付けの真相です。
そのルーツは江戸時代にまで遡ります。まつやの創業者一族の祖先は、日本海を往来する「北前船」の廻船問屋を営んでいました。当時、長期にわたる過酷な航海では、ビタミン不足による脚気や栄養失調で命を落とす船乗りが少なくありませんでした。そこで船主が考案したのが、保存性の高いみそに様々なスパイスや調味料を調合し、船上で手に入るわずかな野菜を美味しく大量に食べられるようにした特製みそでした。
この船乗りたちの命を支えた秘伝の調合技術が代々受け継がれ、昭和30年代にかほく市で飲食店として創業した際、鍋料理のベースとして提供されたことで評判が一気に拡大。家庭用として商品化されたことで、石川県を代表するソウルフードへと成長を遂げました。