本作の底流に脈打つのは、日常の裂け目から突如として現れる不穏の気配だ。日本のサスペンス映画界において空間の恐怖を描き続けてきた巨匠・黒沢清の冷徹なリアリズムと、A24が培ってきた先鋭的な芸術性。その二つの潮流が見事な化学反応を起こした結果、かつてない切れ味を持つサイコスリラーが誕生した。
画面の端に漂うカーテンの揺らぎや、不意に遮断される環境音。過剰な劇伴に頼ることなく、観る者の想像力を極限まで刺激する演出は、純度の高い映画的サスペンスの真骨頂といえる。単に驚かせるだけのホラーとは一線を画す、じわじわと神経を締め上げるような恐怖の構築美がここにある。