学術的な厳密さはさておき、野外や日常生活で目の前の虫を判別したい場面は多い。その際に役立つ蛾と蝶の見分け方には、確率の高い4つの観察ポイントがある。
最も信頼性が高いのは触角の形状比較だ。日本の蝶のほとんどは、触角の先端がマッチ棒のように丸く膨らんだ「こん棒状」をしている。一方、蛾の触角は先端まで細い「糸状」や、雄が雌のフェロモンを敏感にキャッチするために発達した「羽毛状(クシ状)」をしているケースが圧倒的に多い。
次に着目すべきは羽のたたみ方と構造だ。蝶は静止時に羽を背中の上で垂直にぴったりと立てて閉じる性質が強い。対して蛾は、羽を背中に屋根型に伏せたり、水平に広げたままペタッと壁に張り付くように止まることが多い。さらに、蛾の後翅には前翅と連結させるための「翅刺(しし)」と呼ばれるフック状の構造が備わっているが、進化した蝶ではこの構造が退化している点も構造的な相違点だ。
3つ目は昼行性と夜行性の違い、4つ目は胴体の太さと体毛の有無である。蝶は昼間に活動するためスマートな胴体と滑らかな体表を持つのに対し、夜間の冷え込みの中で筋肉の熱を保つ必要がある蛾は、太い胴体にびっしりと体毛(鱗毛)を生やしている個体が目立つ。