求人票や内定通知書に記載された「年収2,000万円」という文字列を、額面通りの固定給と受け取るのは早計です。外資系の報酬体系は、「ベース給(Base Salary)」「インセンティブ(Bonus / Commission)」「株式報酬(RSU等)」の3層構造で成り立っています。
特に営業職(アカウントエグゼクティブなど)の場合、年収目標値であるOTE(On-Target Earnings)が「ベース給50%:インセンティブ50%」や「60%:40%」に設定されることが通例です。目標達成率(クオータ)が100%に達して初めて満額が支給され、達成率が60%に落ち込めば年収は一気に数百万円単位で目減りします。逆に200%を達成すれば、インセンティブが累進的にハネ上がり年収4,000万円を超える「アクセラレーター条項」が存在するのも特徴です。
また、外資IT企業などで年収の大半を占めるのがRSU(Restricted Stock Units:譲渡制限付株式)です。入社時や毎年の評価時に米ドル建て株式が付与され、通常3年から4年かけて段階的に権利が確定(ベスティング)します。自社の株価が上昇している局面では莫大な資産形成をもたらす一方、株価が急落すれば見込んでいた年収パッケージが数百万円目減りするリスクを社員自身が背負うことになります。
さらに見落としてはならないのが、日本国内の税制による手取り額の急激な目減りです。日本の所得税は最高税率45%の累進課税を採用しており、住民税10%を加えると課税所得に対する限界税率は最大55%に達します。
- 額面1,000万円:手取り約720万〜740万円(手取り率 約73%)
- 額面1,500万円:手取り約1,020万〜1,060万円(手取り率 約69%)
- 額面2,000万円:手取り約1,280万〜1,340万円(手取り率 約65%)
- 額面3,000万円:手取り約1,750万〜1,850万円(手取り率 約60%)
年収が2,000万円を超えたあたりから手取りの伸び率は極めて鈍化します。日系企業のような住宅手当や退職金控除の恩恵が薄い外資系社員は、可処分所得の実質的な水準を冷静に計算しておく必要があります。