蛇信子が捕らえた化学物質は、そのまま口の中に運ばれる。しかし、そこで終わりではない。舌先に付着した分子は、口蓋にある「ヤコブソン器官」(鋤鼻器)に転送される。この器官は、通常の鼻とは別の、高度に特化した嗅覚受容体を持っている。
ヤコブソン器官は、空気中の揮発性の匂いだけでなく、獲物の体表に残るフェロモンや、他の蛇の痕跡といった、より重くて揮発しにくい分子も検出できる。つまり、蛇信子は、空気中と地面の両方の情報を収集する、二重のセンサーとして機能しているのだ。
このシステムの精度は驚異的だ。実験によれば、ある種の蛇は、数メートル離れた場所にいる獲物の種類を、蛇信子だけで識別できるという。これは、私たちが目で見て判断するのと同等か、それ以上の精度だ。
蛇信子の動き:なぜ絶えず動いているのか
蛇が常に舌を出し入れしているのは、決して威嚇のためだけではない。あの動きには、明確な戦略がある。舌を出すたびに、新しい空気のサンプルを採取している。そして、引っ込めるたびに、その情報をヤコブソン器官に送り込んでいる。
この動作の頻度は、状況によって変化する。獲物を追跡しているときは、1秒間に数回も舌を動かす。逆に、休息中や安全な場所では、その頻度は大幅に減る。つまり、蛇信子の動きは、その蛇の「警戒レベル」や「狩猟モード」を如実に示しているのだ。
また、舌を大きく左右に振る動作は、より広範囲の匂いを収集するためのものだ。これは、特に新しい環境に侵入したときや、獲物の痕跡を探しているときに見られる。