旅行レビューサイトやSNSの書き込みを見ていると、「猫の細道という名前なのに、一匹も猫に出会えなかった」「猫カフェのような場所だと思って行ったら肩透かしを食らった」という感想が定期的に投稿されています。このギャップはなぜ生じるのでしょうか。現場観察と生態データから見えてくるのは、極めて自然な理由です。
第一に、猫という動物は薄明薄暮性(明け方と夕暮れ時に最も活発に活動する習性)を持っています。日中の気温が上がる時間帯や、大勢の観光客が行き交う正午前後には、物陰や民家の床下、人が立ち入れない山林の涼しい場所で静かに眠っているケースがほとんどです。
第二に、尾道市全体で推進されている地域猫活動(TNR活動:捕獲・不妊去勢手術・元の場所に戻す)の進展が挙げられます。地元ボランティアや住民の手によって衛生環境と適正管理が徹底された結果、かつてのような無秩序な野良猫の繁殖が抑えられ、一帯の猫たちは決まった縄張りで穏やかに暮らしています。つまり、「猫が減った」のではなく、「地域と調和した健康的な個体群が静かに暮らしている」というのが実態です。
本物の猫と自然な形で出会いたい場合は、観光客の足音が途絶える午前8時〜9時半頃の早朝、あるいは日差しが傾き始める16時以降の夕方を狙うのが賢明です。過度な接触や餌付けは厳禁とされており、一定の距離を保ちながら風景の一部として見守る姿勢が求められます。