木材をふんだんに取り入れ、自然光を巧みに操るアプローチは、隈氏が手掛けた国立競技場の設計思想とも深く共鳴している。しかし、過密なダイヤを支える鉄道インフラ産業において、木材を大規模に導入することは極めて高いハードルを伴う挑戦だった。
鉄道駅には極めて厳しい耐火性能や長期的なメンテナンス性が求められる。その難題をクリアしたのが、特殊な不燃処理を施した集成材と精密な金物ジョイント技術だ。これにより、安全性と木の温かみを両立させた現代和風建築が完成した。効率と利便性ばかりが優先されてきた従来の駅建築に対し、身体性や感性に寄り添う空間価値を提示した意義は極めて大きい。日本の駅舎デザインにおける決定的なパラダイムシフトが、ここに刻まれている。