歴史的背景に加え、現代の入浴ルールを直接決定づけたのが1990年代初頭の出来事だ。1992年に施行された「暴力団対策法(暴対法)」は、社会全体で組織犯罪を排除する大きな契機となった。
当時、反社会的勢力の構成員が温泉施設や銭湯を交流の場として利用し、他の客に威圧感を与えるトラブルが相次いでいた。これに対し、施設側や温浴産業は警察当局の要請や自衛策として、刺青を持つ者の入場拒否に踏み切った。法的な観点から「暴力団関係者のみを個別に特定して排除する」ことは現場の従業員にとって極めて危険であり、実務上不可能に近かった。結果として、「刺青・タトゥーがある方全般」を一律に断るというルールが全国に広がっていったのである。