観測技術における最大のブレイクスルーは、深海に張り巡らされた巨大センサーネットワークの存在である。国立研究開発法人防災科学技術研究所が運用する「S-net(日本海溝海底地震津波観測網)」および「DONET(地震・津波観測監視システム)」は、震源域の真上に設置された無数の水圧計と地震計で構成されている。
従来の陸上観測点だけでは捉えきれなかった海溝型地震の「初期微動」や水圧変化を、これらのシステムはリアルタイムで捕捉する。津波の発生を最大で20分程度早く検知し、陸域の揺れに対しても数秒から数十秒の猶予を生み出す。深海の暗闇から絶え間なく送られるテラバイト級の連続データは、プレート境界面の微小な「きしみ」を余すところなく地上へ伝える。
観測の最前線では、この膨大な海域データストリームに機械学習アルゴリズムを直結させる試みが実用化段階に入った。ノイズと本震の前兆シグナルをミリ秒単位で選別する精度は飛躍的に向上している。