かつてオリンピックの開催都市決定といえば、立候補都市の首長や招致アンバサダーが世界中を行脚し、IOC総会で委員による無記名投票が行われる「壮絶な招致レース」が恒例でした。しかし現在、その風景は完全に過去のものとなっています。
IOCが推進した改革プログラム「オリンピック・アジェンダ2026」および「アジェンダ2026+5」により、選定プロセスは根本的に改定されました。最大の変更点は、立候補都市同士を競わせる入札方式を廃止し、IOCの「将来開催地委員会」が関心都市と非公開で事前対話を行い、適格と判断した都市を理事会へ一本化推薦するトップダウン型対話方式へと移行したことです。
このルール変更により選出された象徴的な例が、2032年ブリスベン大会です。激しい国際投票合戦を経ることなく、オーストラリアの既存スポーツインフラと政府保証を評価したIOC委員会が「最優先候補」に指定し、総会での信任投票のみで異例のスピード決定を果たしました。
選定プロセスの大転換をもたらした背景には、過度なロビー活動による贈収賄リスクの排除に加え、敗退都市が負う莫大な招致経費(数十億〜数百億円)の無駄をなくし、開催に伴う財政破綻を防ぐというIOCの強い危機感があります。