「五月雨式に申し訳ございません」という言いまわし自体は、謙譲と謝罪の意を含むため、文法的なビジネス敬語の正しい使い方としては誤りではありません。しかし、コミュニケーション心理学および業務効率の観点から検証すると、受け手によっては強いストレス要因になり得ることが分かっています。
連続連絡がもたらす「コンテキスト・スイッチング負荷」
日本ビジネスメール協会が公開している実態調査データ等でも示されている通り、ビジネスパーソンが1日に受信するメール件数は年々増加傾向にあります。メールを受信するたびに相手の集中力は途切れ、元の作業に戻るまでに一定の認知コスト(コンテキスト・スイッチング)が発生します。
「五月雨式に〜」と丁寧にお詫びを添えたとしても、相手側から見れば「通知が何度も鳴る」「過去ログを遡って情報を突き合わせる手間が生じる」という実害は変わりません。マナーの本質は言葉遣いそのもの以上に「相手の時間と認知リソースを奪わない配慮」にあります。言葉を添えれば何通送っても許されるわけではない、という認識を持つことが肝要です。
「申し訳ございません」と「失礼いたします」の使い分け
ビジネス現場でよく議論されるのが、「五月雨式に申し訳ございません」と「五月雨式に失礼いたします」の違いです。両者は謝罪の深度と使用タイミングにおいて使い分けるのが適切です。
「申し訳ございません」は完全な不手際や手落ち(添付忘れや記載漏れ)に対する事後のお詫びに適しています。一方、「失礼いたします」は、あらかじめ「確認できた情報から順次お送りします」と前置きして送る事前の断り・アナウンス、あるいは軽微な追加連絡の際に適しています。状況の深刻さに応じて語尾のトーンをコントロールすることが、スマートな対応につながります。