現在、不思議の国のアリス症候群そのものをピンポイントで消失させる単一の「特効薬」は認可されていません。医療現場における最新の治療戦略は、知覚異常を誘発している「根本原因の特定と沈静化」に主眼が置かれます。
EBウイルスなどの感染症が原因である小児の場合、特異的な抗ウイルス薬による治療を行うことは稀で、安静と水分補給を中心とした対症療法が基本となります。脳浮腫が疑われる重篤なケースを除き、自然免疫の働きによってウイルス抗体価が安定すれば、アリス症状も自然と終息を迎えます。
一方、偏頭痛が原因となっている成人の場合、頭痛医学の進歩が劇的な恩恵をもたらしています。発作時にはトリプタン系薬剤による早期頓挫を図るほか、予防療法としてカルシウム拮抗薬、抗てんかん薬(バルプロ酸など)、ベータ遮断薬が処方されます。近年普及したCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)関連抗体薬による予防治療によって、偏頭痛発作の激減とともにアリス症候群の前兆現象が完全に抑え込まれたという臨床例も積み上がっています。