インターネットの検索コミュニティやSNS上では、時に「松代象山地下壕 心霊の噂」といったオカルト的な文脈で語られるケースが見受けられます。薄暗く冷気が漂う広大な地下空間という視覚的インパクトや、多くの犠牲者を出した突貫工事の歴史が、センセーショナルな噂の温床となってきた側面は否めません。
しかし、現地を取材するジャーナリストや歴史研究者の見解は極めて明確です。この場所の本質はオカルト的な興味本位の対象ではなく、国家が国民を総動員して突き進んだ戦争の終末期を証明する第一級の戦争遺跡(負の遺産)です。薄暗い坑道内で肌を刺す冷気は、心霊現象などではなく、年間を通じて約13〜15度に保たれる地下深層の自然な地温と湿度による科学的現象です。
安易な怪談話として消費するのではなく、壁面に刻まれた無数の削岩痕(ロッドの跡)やツルハシの打痕を直視し、極限状態の人命と労働の現場に思いを馳せることこそが、この遺構を訪れる本来の意義と言えます。