インターネット上で長年語り継がれている代表的な手法に「煮沸した水で作る氷は透明になる」という説があります。料理系SNSや掲示板などでも頻繁に紹介されていますが、科学的な観点から検証すると、これ単体では不十分であることが明らかになっています。
水を沸騰させることで、水中に溶け込んでいた溶存気体(酸素や二酸化炭素など)を一時的に追い出す「脱気」効果は確かに得られます。しかし、粗熱を取って室温に戻す過程で空気は再び水中に溶け込んでいきます。さらに決定的な盲点は、煮沸しても水中のミネラル成分(カルシウムやマグネシウム)は蒸発せず、むしろ水分が減った分だけ濃度が濃縮されるという事実です。
通常の四角い製氷皿に煮沸したお湯を注ぎ、そのまま急速凍結させた場合、中心部には依然として濃縮されたミネラルが結晶化の過程で閉じ込められ、白濁が残ります。透明度を上げるために煮沸を行う場合は、あくまで「補助的な脱気」と位置づけ、必ず前述の「一方向断熱による緩慢凍結」とセットで運用することが必須条件となります。