緑豊かな渡良瀬川上流の地に建つ旧花輪小学校記念館。この壮麗な木造2階建て校舎の原点は、昭和初期の美談に遡ります。明治6年(1873年)に開校した花輪小学校ですが、昭和初期の不況下で校舎の老朽化が進んでいました。その窮状を救ったのが、同校の卒業生であり、近代製鉄の基礎を築いた今泉嘉一郎(1867–1954)でした。
当時、日本鋼管を一代で巨大企業へと育て上げていた今泉は、恩師への感謝と郷土の後輩たちの育成を願い、当時の金額で約2万3000円という巨額の私財を寄付。昭和6年(1931年)11月、当時としては破格の最新設備と耐震構造を備えた近代木造校舎が落成しました。群馬県内に現存する昭和初期の木造校舎として屈指の完成度を誇り、2001年11月には群馬県内でも早い段階で国の登録有形文化財に登録されています。
さらに同校は、日本近代児童文学の黎明期を支えた石原和三郎(1865–1922)の母校であり、彼が若き日に教鞭を執り校長を務めた学び舎でもあります。近代産業の礎を築いた実業家と、近代教育・童謡文化の先駆者。日本の黎明期を牽引した二人の巨人が、同じ山あいの小学校から巣立ち、互いの志をつないだという歴史的背景こそが、この記念館を唯一無二の存在に昇華させています。