菅井きんさんの経歴を振り返ると、その卓越した役者魂に驚かされます。1926年(大正15年)に東京・牛込で生まれた菅井さんは、戦後間もない1947年に劇団「俳優座」の養成所に第1期生として入所しました。
同世代の女優たちがヒロインを目指すなか、菅井さんは若い頃である20代半ばからすでに母親役や近所のおばさん役、老け役を率先して担当していました。自身の容姿を冷静に客観視し、「脇役のスペシャリスト」として生きる道を選んだプロ意識の高さが伺えます。
黒澤明監督の名作映画『生きる』(1952年)や特撮の原点『ゴジラ』(1954年)など、日本映画の黄金期を支える作品に相次いで出演。テレビ時代が到来してからも、伝説の刑事ドラマ『太陽にほえろ!』をはじめとする数々の名作ドラマにゲスト・レギュラーとして出演し、昭和の庶民生活のリアルを体現する唯一無二のバイプレイヤーとして地位を確立しました。