錦絵(木版画)だけでなく、歌麿は肉筆画(自らの筆で直接描いた絵画)でも圧倒的な傑作を残しています。その最高峰が、栃木の豪商・善野家の依頼で描かれたとされる「雪月花」三部作です。
なかでも岡田美術館(神奈川県箱根町)が所蔵する『深川の雪』は、縦約2メートル、横約3.4メートルにおよぶ浮世絵史上最大級の肉筆大作。深川の辰巳芸者たちが雪の日に楼閣でくつろぐ様子が、総勢27人もの人物とともに圧巻のスケールで描かれています。
長年行方不明となり「幻の名画」と呼ばれていましたが、2012年に約60年ぶりに再発見され、日本中を驚嘆させました。『吉原の花』(ワズワース・アセニアム美術館所蔵)、『品川の月』(フリーア美術館所蔵)とともに、歌麿の卓越した構図力と色彩感覚を物語る至宝です。