この神社を語る上で欠かせないのが、祭神である瀬織津姫命(せおりつひめのみこと)の存在だ。神道における「祓え(はらえ)」の儀式で唱えられる大祓詞(おおはらえのことば)に登場し、人々の過ちや穢れを海へと流し去る水の神。しかし、古事記や日本書紀といった国家の公式記録にはその名がほとんど記されていない。
なぜこれほどの霊力を持ちながら、歴史の表舞台から姿を消したのか。諸説飛び交う謎めいた背景が、知的な探求心を持つ人々を強く引き寄せる。境内を流れる冷徹な清流を目にすると、理屈抜きで「何かがここにいる」と思わせる凄みが漂う。古代人がこの場所に神を見出した理由が、理屈ではなく体感として理解できるはずだ。