小菅水再生センターが果たしてきた最大の社会的功績を語るうえで欠かせないのが、一級河川「綾瀬川」の再生ヒストリーです。昭和30〜40年代の高度経済成長期、東京東部周縁部には急激な人口流入と工場進出が相次ぎましたが、公共下水道の整備は後手に回っていました。その結果、家庭排水や工場排水が無処理のまま流入した綾瀬川はヘドロが堆積し、「日本一汚れた川」という不名誉な称号を長年にわたって背負うことになります。
この危機的状況を打開すべく、1977年(昭和52年)に運転を開始したのが小菅水再生センターでした。足立区や葛飾区の汚水を受け入れ、急速に下水道普及率を押し上げる原動力となった同施設は、単に水をきれいにするだけでなく、高度処理を施した清流水を綾瀬川へ安定的に放流し続けました。滞留しがちだった感潮河川に清浄な水流を取り戻したことで、現在ではアユの遡上が確認されるまでに河川生態系が劇的な回復を遂げています。
稼働開始から40年以上が経過した2026年現在、施設は次なる歴史的転換期を迎えています。老朽化した土木・建築構造物の長寿命化改修はもちろんのこと、地球温暖化対策に対応した省エネルギー型汚水ポンプの導入、生物反応槽における送風量最適化制御システム、さらには大規模地震や激甚化する風水害に耐えうる非常用発電設備の増強など、包括的な施設更新計画が段階的に進められています。目に見えない地下空間では、都市の安全保障を支える次世代のスマートインフラへの脱皮が着々と進行しています。