なぜ、出演オファーが絶えないスーパースターでありながら、あえてリスクの高い経営トップという重圧を背負ったのか。その背景には、小栗が長年胸に秘めてきた3つの明確な理由が存在します。
第1の理由は、「俳優を取り巻く過酷な労働環境の抜本的改革」です。小栗は20代後半から雑誌のロングインタビューやテレビ番組において、日本の過密な撮影スケジュール、不透明な契約形態、そして俳優の権利を守る組織の不在に対して強い危機感を表明してきました。米国ハリウッドに存在する「SAG-AFTRA(全米映画俳優組合)」のような労働組合の必要性を訴え続けてきた彼は、「外から声を上げるだけでなく、事務所のトップとして自ら制度を変える」という実力行使に出たのです。
第2の理由は、「次世代クリエイター・所属タレントの育成と自立支援」にあります。従来の芸能プロに見られた「事務所がタレントを管理・拘束する」という主従関係を脱却し、所属者一人ひとりがクリエイティブな表現者として自立できるプラットフォームを構築することを目指しています。
第3の理由は、「世界市場で戦えるグローバルコンテンツの創出」です。自身のアメリカ留学やハリウッド進出(映画『ゴジラvsコング』出演など)の経験を通じて痛感した、日本エンタメの構造的課題。世界基準のバジェットとクオリティを担保できる制作体制を整えるためには、芸能事務所自体がグローバルスタンダードな経営感覚を持つ必要があると判断した結果でした。