赤城山のカルデラ湖である大沼(おのうま)の東南に位置するこの湿原は、周囲約1キロメートルというコンパクトな規模でありながら、湿原固有の希少な生態系が凝縮された特異な場所だ。かつては湖底であったとされるが、長い年月をかけた堆積作用によって泥炭地化が進み、現在の湿原美が形作られた。
「小尾瀬」と呼ばれる理由は、単に風景の美しさだけにとどまらない。湿原を囲むように設置された木道に立つと、モウセンゴケやレンゲツツジ、ミズバショウといった尾瀬を代表する植物が可憐に花を咲かせている。白樺派の文豪・志賀直哉もまた、赤城山に滞在した際に山頂エリアの雄大な景観を愛し、創作の構想を練ったという記録が残る。歴史ある文学の息吹と、悠久の時が育んだ自然環境が心地よく同居している。