では、なぜ新井貴浩はこれほどまでに「一振りでアウト二つ」のシチュエーションを生み出してしまったのでしょうか。その真相は、当時のチーム戦術と彼のバッティングスタイルが密接に絡み合っています。
特に阪神タイガース時代、新井は不動の4番・5番打者として打線の中心を担っていました。得点圏に走者を置いた場面では、ベンチから積極的に仕掛けるヒットエンドランのサインが出されるケースが多々ありました。走者がスタートを切っている以上、打者はどんなボール球であってもバットに当てて転がさなければなりません。
しかし、相手バッテリーもエンドランを警戒して厳しいコースや鋭く落ちる変化球を投げ込んできます。新井は責任感の強さから何とかバットに当てようと猛スイングを試みるものの、無情にも空振りを喫し、スタートを切っていた一塁走者が二塁でタッチアウトになるという新井貴浩の三振ゲッツーが完成してしまったのです。
決して手を抜いた結果ではなく、チームのためにバットに当てようと必死に食らいついた全力疾走と豪快なスイング。そのあまりにも劇的な結末が、ファンの感情を大きく揺さぶる名場面となりました。