訪れる客の多くは、昭和という時代を教科書やネットでしか知らない世代だ。彼らにとって、カセットテープの擦れる音や、ダイヤル式の黒電話は「古いもの」ではなく「まったく新しいクールなガジェット」として映る。不便であること、思い通りにいかないことが、新鮮な刺激となるのだ。
「タイパ(タイムパフォーマンス)」を追い求めた先で行き着いたのが、あえて時間をかけて無駄を楽しむ贅沢だったというのは皮肉な話である。しかし、それこそが人間らしさの回復プロセスなのかもしれない。誰かに仕組まれたトレンドではなく、自分の手で掘り起こした体験こそが、彼らのアイデンティティを形成していく。