「なぜ新聞休刊日は他社とずらさないのか?」「他紙が休む日に自社だけ発行すれば、購読者を奪える絶好のチャンスではないか」という疑問は、休刊日のたびにネット上やSNSでも頻繁に持ち上がります。しかし、そうした競争論理が一切通用しない決定的な理由が、戸別配達網の現場にあります。
新聞各社が一斉に配達を休止する最大の理由は、新聞販売店の休日確保と、過酷を極める新聞配達員の労働環境を維持するためです。日本の新聞産業は、世界でも類を見ない緻密な「戸別配達制度」によって支えられてきました。雨の日も雪の日も、未明の午前3時から各家庭へ確実に届ける配達網がなければ、紙の新聞というビジネスモデルは成り立ちません。
もし各紙がバラバラに休刊日を設定した場合、販売店の現場では何が起きるでしょうか。ある月曜日はA紙が休みでもB紙の配達があり、翌週はB紙が休みでもA紙を配らなければならない事態に陥ります。これでは店舗全体を休業にすることができず、専従員や配達員に「完全休養日」を与えることが不可能になってしまいます。各社が一斉に発行をストップして初めて、販売店はシャッターを下ろし、配達員全員が一斉に休息を取ることができるのです。
新聞社の幹部や販売局員が語るように、「休刊日は新聞社のためではなく、配達現場の命綱」という表現が決して誇張ではない現実がそこにあります。