この楽曲の特異性は、いわゆる王道の「ヒロインのテーマ」が持つ華やかさや明るさを意識的に排除した構造にある。作曲を手掛けた植松伸夫氏は、彼女の華奢な肩にのしかかる過酷な運命と、誰にも明かせない葛藤を音符に変えた。
冒頭のメロディは、どこか躊躇いがちに始まる。優美なメジャーコードで幕を開けながらも、すぐさま哀愁を帯びたマイナーの響きへと移ろう。この絶妙なコード進行の揺れこそが、彼女が抱える「優しさと諦念」の二面性を完璧に表現しているのだ。音楽理論的にも、主旋律が完全な解決を見せないまま次のフレーズへと浮遊するように繋がるため、聴き手の心に甘美な余韻と切なさを永遠に残す仕掛けになっている。壮大なオーケストラ編成であっても、主旋律の芯にあるのは常に孤独なピアノの独白だ。この緻密な対比構造こそが、世界中のリスナーを捉えて離さない最大の秘密である。