かつて刑務所の食事は蔑称として「臭い飯」と呼ばれていた。昭和初期の粗悪な米や保存状態の悪さが生んだ言葉だが、現代のポップカルチャーにおける獄中食の描かれ方は、まったく異なる様相を呈している。
その転換点となったのが、漫画家・花輪和一が自身の獄中体験を克明に描いた名作コミックであり、後に崔洋一監督によって実写化された映画『刑務所の中』だ。淡々と配給される醤油の小袋やアルマイトの食器、大晦日の夜にだけ許されるみかんとサイダー。徹底的なリアリズムで描かれた食事シーンは、観る者に奇妙な食欲と圧倒的なフェティシズムを植え付けた。
さらに、受刑者たちがシャバで食べた最も美味いものの記憶を語り合う異色のグルメドラマ『極道めし』では、食事という行為が人間の尊厳や郷愁と不可分であることがユーモラスかつ切なく描かれた。映像作品のなかで、刑務所のメシは単なる栄養補給の手段を超え、人間の剥き出しの欲望を映し出す鏡として機能している。