診察室や集団健診の会場で血圧測定器を前にした際、突如として血圧測定ドキドキする理由は、人間の原始的な防衛反応である「闘争・逃避反応(Fight or Flight)」が作動することに起因します。医療従事者の白衣や独特の消毒液の匂い、機械が発する電子音、そして「ここで高い数値が出たら再検査になる」という強いプレッシャーを大脳皮質が感知すると、瞬時に扁桃体が興奮状態に陥ります。
この情動的ストレスをトリガーとして、副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリンといったカテコールアミンが血中に大量放出されます。その結果、心拍数が急上昇して心拍出量が増加すると同時に、末梢血管がキュッと収縮するため、物理的な水圧と同じ原理で動脈壁にかかる圧力(血圧)が一気に跳ね上がります。これが、病院で血圧が高くなる真相の根底にある自律神経のメカニズムです。
日米の循環器学会の報告によれば、健診受診者のうち「白衣の前に立つだけで緊張する」と自覚している層の収縮期血圧は、平均して15〜35mmHg程度の一時的上昇を示すことが確認されています。つまり、その場で記録された高い数値は血管の恒久的な老化や器質的動脈硬化を示すものではなく、自律神経の交感神経側への急激な針の振れ幅を反映しているに過ぎません。