1990年代から2000年代にかけて、バッド・ボーイ・エンターテインメント(Bad Boy Records)は世界的なヒット曲を連発し、ブラックミュージックの頂点を極めた。だが、その華麗な成功の裏には、創業者であるコムズによる絶対的な支配と、道徳を逸脱した乱痴気騒ぎが常態化していたとされる。当時10代前半でコムズの邸宅に預けられていたアッシャーは、後にその体験を「信じられないような光景の連続だった」と回想している。
皮肉にも、そのアッシャー自身がビーバーの才能を見出し、音楽ビジネスへと引き入れる中心人物となった。関係筋の証言によれば、アッシャーはかつて自分が味わった過酷な業界の毒毒しさからビーバーを守ろうと苦心していた形跡もある。しかし、業界全体に張り巡らされたコムズの影響力から完全に隔離することは不可能だった。帝国の崩壊によって明るみに出たのは、才能ある若者を食い物にするシステムの冷酷さだった。