岩井俊二『Undo』結末の真相|豊川悦司と山口智子の究極の愛

岩井俊二『Undo』結末の真相|豊川悦司と山口智子の究極の愛

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物語の主人公は、都会の静かなマンションで二人暮らしを送る翻訳家・作家の由紀夫(豊川悦司)と、その妻である萌花(山口智子)です。一見すると満ち足りた洗練された生活を送っているように見える二人ですが、部屋の中で一日中原稿に向き合い続ける夫と、社会から切り離された空間で過ごす妻の間には、目に見えない心理的距離が少しずつ蓄積していました。

ある日を境に、萌花の行動に異変が現れ始めます。部屋にある本、リンゴ、文房具、家具といった身の回りのあらゆる物品を、麻紐や毛糸を使って執拗に縛り上げるようになったのです。エスカレートする妻の奇行に戸惑った由紀夫は、精神科医(田口トモロヲ)のもとへ萌花を連れて行きます。そこで下された診断名が「結節症候群(Knot Syndrome)」でした。

医師は、この症状が強度のストレスや孤独感、関係性の不安から生じる強迫観念の一種であると説明します。何かを縛り、固く結びつける行為を通じてしか、バラバラに崩壊しそうな自分自身の精神と他者との繋がりを繋ぎ止められない――。しかし、投薬や形式的なカウンセリングで彼女の心の渇きが癒えることはありませんでした。

自宅に戻った萌花の症状はさらに悪化し、やがて縛る対象は無生物から、飼っていたカメ、そして自分自身の身体へと向かっていきます。そして萌花は、震える声で由紀夫に懇願します。「私を縛って。強く、ほどけないように縛って」と。妻の苦しみを真正面から受け止めた由紀夫は、彼女の願いを受け入れ、自らの手で妻の身体に幾重もの紐を巻き付けていく決断を下します。

林 結菜
著者

林 結菜

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。