かつて『ネット右翼の逆襲』で一躍脚光を浴びた古谷の論著は、ネット空間の特定の言説がどのように生成され、実社会へ影響を及ぼすかを鮮やかに描き出した。当時は一部のサブカルチャー的現象と見なされがちだったネット空間の過激化を、学術的かつ実証的なアプローチで解明した功績は極めて大きい。
それから星霜を経て、ネット言論は単なる一部の掲示板文化を超え、主要メディアのニュース報道や政策決定の場にまで侵食した。初期の観察対象であった「ネット右翼」の構造は多角化し、かつてのような一元的な思想構造では割り切れない多層的な集団へと進化を遂げている。過去のフレームワークをアップデートし続ける鋭い批評眼は、時代を先取りする評論活動の象徴と言える。