彼の名を幅広いお茶の間に浸透させた代表作といえば、やはりドラマ『時効警察』シリーズだろう。三木聡監督らが手掛けたこの伝説的コメディにおいて、岩松が演じた熊本課長役は強烈なインパクトを残した。脱力感漂う署内のやりとり、脈絡のない会話、絶妙な間。一見すると適当に見えるその佇まいこそ、計算し尽くされた高度なコメディの技術にほかならない。
しかし、彼の恐ろしさは笑いだけに留まらない点にある。時に重厚なサスペンス作品に登場すれば、狂気や凄みを静かに漂わせる人物へと豹変する。笑いと恐怖、軽やかさと重厚さ。一見すると対極にある二つの要素を、彼は同じ地平で自在に操ってみせるのだ。『時効警察』の舞台裏でも、台本を行間にまで解釈し、共演者のリアクションを引き出す鋭い感覚が遺憾なく発揮されていたという。