現在私たちが日常的に使っている「言葉」は、「言の葉」の「の」が脱落して定着した言葉です。しかし、現代日本語の文脈において両者が持つニュアンスや機能には、明確な境界線が存在します。
言語社会学的な見地から整理すると、その違いは「道具としての言語」か「感情の表出としての言語」かという点に集約されます。
「言葉」は記号として情報を迅速かつ正確に伝えるためのシステムです。一方、「言の葉」は話者の心のありようや情景が宿った有機的な表現として機能します。事実だけを淡々と述べる際には「言葉」が適していますが、そこに真心や感謝、季節の移ろいといった情感を添えたいとき、日本人は無意識のうちに「言の葉」という言葉の持つ響きに惹きつけられます。