伊東四朗のキャリアは、コントとお笑いの金字塔から本格派俳優への鮮やかな転身の歴史でもあります。1960年代、三波伸介、戸塚睦夫とともに結成した「てんぷくトリオ」で一世を風靡し、お茶の間の爆笑をさらいました。その後、小松政夫とのコンビで誕生した『みごろ!たべごろ!笑いごろ!!』の「電線音頭」や「ベンジャミン伊東」は、昭和のテレビカルチャーを揺るがす伝説となっています。
一方で、役者としての評価を決定づけたのが、1983年のNHK連続テレビ小説『おしん』です。主人公・おしんの厳しくも愛情深い父親「作造」役を熱演し、極貧の中で苦悩する父親のリアリティを見事に体現。それまでのコメディアンのイメージを覆し、日本中を涙させました。
さらに平成に入ると、日本テレビ系『伊東家の食卓』で一家の「お父さん」としてMCを担当。日常生活の知恵を紹介する「裏ワザ」は社会現象となり、最高視聴率30%近くを叩き出すメガヒット番組となりました。喜劇の軽妙さと役者の重厚さ、そして司会者としての親しみやすさを兼ね備えた唯一無二のポジションを確立したのです。