この凄絶な下積み生活と無二の師弟関係をリアルに描き出し、ベストセラーとなった自伝的エッセイが『赤めだか』である。理不尽とも思える師匠の難題、築地市場への修行命令、そして夜を徹した稽古。一見すると非情に見える指導の裏には、弟子一人ひとりの才能を見抜き、自我を打ち砕いて芸を植え付けようとする深い愛情が存在していた。
理屈を超えた師弟の情愛と、逃げ場のない実力社会。その双方を経験した者だけが獲得できる圧倒的な凄みが、高座での佇まいに立ち現れる。『赤めだか』で明かされたエピソードの数々は、単なる苦労話ではなく、彼らの芸がなぜこれほどまでに濃密で客を惹きつけるのかを証明している。