彼の真骨頂は、凄惨なノワールや狂気の時代劇だけにとどまらない。珠玉の群像劇ドラマ『私たちのブルース』で見せたハンス役の演技は、多くの視聴者の涙を誘った。娘のゴルフ留学費用のために友人を騙そうと苦悩する、くたびれた中年男性の背中。そこには、かつてのカリスマモデルの面影を完全に消し去った、等身大の人間の弱さと愛おしさが滲み出ていた。
さらにバラエティ番組『三食ごはん』シリーズで見せる、卓越した料理の腕前と飾らない人柄は、お茶の間に「チャジュンマ(チャおばさん)」の愛称を定着させた。手際よくキムチを漬け、共演者を甲斐甲斐しく世話する素朴な日常の姿。この完璧なまでの日常感があるからこそ、フィクションの世界で見せる狂気が一層の鋭利さを持って突き刺さるのだ。