現役時代、巧みな技と粘り強い取り口で第63代横綱に上り詰めた旭富士正也。その現役生活で培われた経験と知識は、現在の伊勢ヶ濱部屋の指導方針に色濃く反映されている。親方が弟子たちに求めるのは、無理な増量による力任せの相撲ではなく、体幹の強さと柔軟性を兼ね備えた「負けない体」の完成だ。
大相撲本場所での過酷な十五日間を走り抜くには、一瞬の爆発力だけでなく、連日の疲労に耐えうるしなやかな筋力と持久力が欠かせない。稽古場での指導は、一見すると極めて厳しいが、そこには弟子一人ひとりの骨格や取り口に応じた細やかなアドバイスが込められている。怪我を防ぎ、力士としての寿命を延ばすための合理的なアプローチは、プロスポーツ業界全体からも高い注目を集めている。